映画【シャニダールの花】鑑賞しました。
こちらのページでは、映画【シャニダールの花】の感想・レビューを、核心に触れない程度のネタバレも含めつつ、書いていきます。
このページでわかること
映画【シャニダールの花】は、「女性の胸に美しい花が咲く」という不思議な世界観の異色恋愛ファンタジー映画です。
石井岳龍監督が、長年温めてきた企画を映画化。
第37回モントリオール世界映画祭の「フォーカス・オン・ワールド・シネマ」部門にも出品されました。
限られた女性の胸に咲く“シャニダールの花”。
満開時に採取される成分は、画期的な新薬開発に役立つと億単位の高値で取引されていた。
シャニダール社で、花を満開にするため研究者として働く大瀧賢治(綾野剛)のもとに、カウンセラーとして赴任してきた美月響子(黒木華)。
響子は、「胸から花が咲いてしまった」女性の心に寄り添ったケアを行う。
そのためには、花の謎を解明することが必要だと考えていた。
一方、大瀧は、花の謎を探ることより、花を満開にすることが仕事だと思っている。
二人の考え方は違うものの、シャニダールの花と患者に向き合う二人は、互いに惹かれ合っていく。
そんな頃、シャニダールの花を採取する手術を受けた女性が死亡するという異常事態は起きてしまい……。
野蛮だったと言われるネアンデルタール人も、死者を悼み、花を手向けたという行為から、「人間の“心”が発生した瞬間」という説が存在する。
この説に着想を得て、「シャニダールの花」と名付けられた。
綾野剛さんと黒木華さんW主演。
2016年には、岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」でも共演しています。
公開日:2013年7月20日 製作国:日本 上映時間:104分
監督:石井岳龍 脚本:じんのひろあき・石井岳龍・田中智章
出演:綾野剛・黒木華・刈谷友衣子・山下リオ・古舘寛治・伊藤歩 他
綾野剛さんにとっては、主演作として初の海外映画祭招待作品となりました。
ですが、同じく綾野剛さん出演作『ガッチャマン』の初日と重なって映画祭には参加できなかったとのこと。
残念でしたね
胸に花が咲いてしまった患者役を演じた伊藤歩さん。
花を綾野剛さんに診察されるシーンがあるのですが、かつて伊藤歩さんが演じた映画『スワロウテイル』でのアゲハが胸に入れ墨をいれるシーンをちょっと思い出しました。
映画【シャニダールの花】
ことはの感想をざっくり3つにまとめると……。
シャニダールの花は
天使なのか悪魔なのか
コントラストで美しさ際立つ
暗いトーンと艶やかな色
独創的な世界観
二人を狂わす愛の花
私の感想を一つずつ書いていきますね☆
満開に咲いたシャニダールの花は、新薬の開発にも役立つということで、一見、良いものにも思えます。
ですが、劇中後半、シャニダール社の所長・吉崎(古舘寛治)から、まったく違う見解が述べられるシーンがありました。
吉崎の言う通りとなれば、人類を破滅に導く恐れも。
良くも悪くも、“億”の価値があるシャニダールの花。
そもそも、花の成分に価値があったとしても、女性の胸から生えるという時点で、人間からみたら、腫瘍、異物であることは間違いない。
“母体”の状態が、花の成長に影響を与え、無事に採取される患者もいますが、花が育たない、副作用が出る、最悪、命を落とす患者も出てしまいました。
謎多きシャニダールの花は、人を導く天使なのか、人を滅ぼす悪魔なのか。
ミステリアスなストーリーに惹き込まれました。
シャニダールの花については研究途中。
よって、具体的な解決策などは示されずに物語は終わります。
そのためレビューサイトなどでは、「そもそもなんで花が生えるの?」とか、「で、結局、シャニダールの花ってなんなの?」など、物語のテーマがわかりづらいという感想も見られました。
観るポイントは、冒頭の綾野剛のナレーション、最後のシーン(←映し出された映像+セリフに注目)、この2ヶ所をつなげて考えると、なんとなくの落とし所はみつかるのかなって思います。
ネタバレになるので言えませんが、私は私なりに咀嚼できました。
映画全体を通して暗い映像、明るい場面は白が基調。
その分、花の色の美しさが際立っています。
女性の胸に咲くシャニダールの花、という妖しげな魅力と生命力を強調する作りになっていると思いました。
“シャニダールの花”は、年に一度しか咲かない“月下美人”を参考にしてデザインされたそうですよ。
患者女性が着ている入院着も印象的。
花を守るケースがついていて真っ白、当然、現実世界にはないものですから、異質な感じもしますが、女優さんたちがより美しく見えました。
カウンセラーだった響子にも、シャニダールの芽が生えてしまいます。
シャニダールの花を刈り取らず、咲かせ続けるのは、人体に危険を及ぼす可能性があります。
しかし、響子は、シャニダールの花の謎を解明するため、育て続け、種を採取したいと願います。
シャニダールの花の危険性を心配した大瀧は、響子の胸に咲き始めた蕾を摘み取ってしまい、響子は、大瀧の前から姿を消します。
大瀧(綾野剛)は、研究者として、響子(黒木華)は、カウンセラーとして。
アプローチの仕方はそれぞれですが、二人は、真摯にシャニダールの花に向き合ってきた。
そんな二人の葛藤や、大瀧が響子を救いたいと思う気持ちが切なかった。
二人をつなげたものでもあったシャニダールの花が、二人の運命を狂わせてしまう。
見た目は美しい花だけど、不気味でした。
ミステリアスな雰囲気の世界観に、綾野剛、ピッタリ!
黒木華もカウンセラー役、ハマっていました。
患者役の女優陣(伊藤歩、 刈谷友衣子、 山下リオ )も良かった!
特に立花ハルカ役を演じた刈谷友衣子。
ついつい見てしまう透明感が魅力的でした。
独特な世界観を楽しむ映画
異色の恋愛ファンタジーということで、パキッとした答を求める映画ではないかな、と思います。
モヤモヤするという感想を持つ方も多いかも?
ですが、ラスト、夢かまことか、わからない二人のシーン。
ここで私は、ある種のメッセージを感じました。
私はけっこう好きな世界観の映画で楽しめました。