バート・レイノルズ最後の主演作【ラストムービースター】観てきました。
感想(ちょっぴりネタバレあり)やみどころをまとめます。
このページでわかること
【ラストムービースター】を観ようと思ったのは、王様のブランチで映画コメンテーターのLiLiCoさんが「今年のベスト何本かには入る!」と絶賛していたから。
で、観た感想を結論から言うと……
めちゃくちゃ
良かった!!!
1回、小泣きして……
2回、大泣き
しちゃいました。
良かったなぁ、と感じたみどころは3つ。
- ヴィックに共感できるポイントが誰にでもある
- 過激系メンヘラ女子リルの成長
- 3人の映画オタクたちが、絶妙にいい
では、一つずつ書いていきます。
かつてアクションスターとして活躍したヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)。
今ではすっかり老い、過去を栄光を引きずった気難しく孤独な老人に。
映画は、ヴィックが飼っていた老犬を安楽死させてやるところから始まります。
友人とお茶を飲めば、「◯◯が死んだよ」という仲間の訃報を聞かされる。
若い女性を見ればそれなりに欲情するも、だからといって、どうすることもできない。
ヴィック自身も身体が思うように動かない、いわゆるヨボヨボの状態。
そんなヴィックの元に届いた「国際ナッシュビル映画祭」の招待状。
クリント・イーストウッドやロバート・デ・ニーロも受賞した“特別功労賞”をヴィックも受賞したというのだが……。
映画の出だしは、中高年向け終活映画感が、プンプン匂ってきました。
(※途中から若い世代も観て欲しい!って思うようになりましたが)
“過去の栄光にすがるヨボヨボじーさん”の姿は、若い世代には惨めに映るかもしれない。
心身ともの変化を感じ始めるアラフォー世代や、現役リタイヤを意識したりする世代は、ちょっと複雑な思いがあるかも。
でも20歳であっても「俺の人生のピークは高校のサッカー部の時だったな」とか、「あの時、大切な人にあんなこと言うんじゃなかった」とか。
昔輝いていた自分と今とのギャップに悩んだり、後悔したりやり残したことがあったり。
ヴィックほどのスーパースターじゃない一般人にだって、年代関係なくそうした思いはある。
ヴィックの姿を通して、未来を考えるのか、過去を振り返るのか。
その配分は年代によって変わると思いますが、誰しもヴィックに共感できる“何か”はあるのかな、って感じました。
映画では、「老いた今現在のヴィックと、 ブイブイ言わせてた若かりし頃のヴィックが会話する」回想シーンが度々出てきます。
絶頂期の バート・レイノルズ、ワイルドセクシーなかほり、プンプンです。
国際ナッシュビル映画祭授賞式に参加するため空港に降り立ったヴィック。
「迎えのリムジンはどこだ?」
待っているとやってきたのは、へそ出し&鼻ピアス、いかにも“イカれたねーちゃん”といった風貌のリル(アリエル・ウィンター)。
リルのオンボロ車で、案内された授賞式会場は、場末のバー。
映画祭といっても、愛好家たちによる手作り、あまりにもお粗末なものだったのである。
主催者たちは熱烈に歓迎。
観客たちも大喜びだが、権威ある賞だと思っていたヴィックは、バカにされたと感じ怒りを抑えることができない。
大酒をあおり、醜態をさらし、「負け犬たちの映画鑑賞会だ」と暴言をはいて会場をあとにする。
「明日からの映画祭には参加しない」
翌日、リルの車で空港に送ってもらう途中、幼少期を過ごした町「ノックスビル」の看板を目にする。
ヴィックは帰るのをやめ、リルと一緒に思い出ツアーを始めたのだ。
最初は渋々、ヴィックに付き合っていたリルだったが……。
リルは、女にだらしない彼氏依存症、うつ病歴があり、たくさんの薬も服用していた経験を持つ、情緒の安定していない女性。
いわゆるメンヘラ女子、で、暗いというよりエキセントリック!
リルの兄が映画祭の主催者だから、仕方なく、ヴィックの運転手をしていたんですね。
現役時代を知らないリルからすれば、ヴィックは、過去の栄光にすがる気難しい老人。
最初はかなり冷たくそっけない態度でした。
ヴィックが横にいるのにカレと電話やラインばかりしているし。
でも、思い出ツアーの半ばくらいから、リルにも変化が。
“栄光は過去のもの”と言っても、ヴィックの残した功績は大きい。
予約していないのにホテルのスィートルームに通されたり、裕福そうな人たちの宴に飛び入り参加、歌を1曲披露すれば拍手喝采。
ヴィックの成し得てきたこと、積み重ねてきたものを感じるにつれ、ヴィックを誇らしく思うようになっていく。
良いことばかりじゃなく、ヴィックの心の痛みにも触れ、たった2~3日の間にリルは成長したんじゃないかな、って感じました。
第一印象は最悪のリルでしたが、最後の方は、すごくチャーミングに見えて、リルのこれからの人生も応援したくなるような、そんな気持ちに。
このあたりは、ぜひ映画を観て感じてほしい見どころです。
20代の方は、リル目線で見ると「ステキな人生を送りたい」って活力が湧いてくるかも。
実際にリルは、ヴィックから受けた、ある2つのアドバイスを実行に移していたし。
映画祭の主催者であり、リルの兄・ダグを演じたクラーク・デューク。
「あー、ほんとにこんな感じの人が、映画祭主催してそう」って感じで役にハマっていました。
どこかで観たことあるような?と思ったら、クラーク・デュークは、『キック・アス』(07)、『キック・アス2』(13)のマーティ役の俳優だったんですね。
他、映画仲間を、
- エラー・コルトレーン
- アル・ジャリール・ノックス
が演じています。
この3人の映画オタクたちが、絶妙にいい!
特に私が好きだったのは、エラー・コルトレーン!
エラー・コルトレーンは、「6才のボクが、大人になるまで。」で、6歳から12年にわたり主人公を演じ続けた俳優さん。
本作では、ヴィックの熱烈なファンを演じていますが、ヴィックへの憧れが止まらない!
「まだ質問タイムじゃない」ってダグに言われても、前のめりで質問しちゃったり、ヴィックが悪態をつく様子に悲しそうな表情を浮かべたり。
“ヴィック愛”が伝わってきて、キュンキュンしちゃいました。
【ラストムービースター】は、ヒューマンドラマ?ともいえるかもですが、“泣けるコメディ映画”と言った方が、私にはしっくり来ました。
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小泣き:ヴィックの独白シーン
思い出ツアー中、泊まったホテルのスィートルームで、ヴィックが今までの人生を語りだすシーン。
バート・レイノルズの“セルフパロディ”との見方もできる【ラストムービースター】。
バート・レイノルズも、かつては、クリント・イーストウッドと双璧をなしたアクションスターでしたが、ヒット作に恵まれなかった不遇の時期もありました。
もちろんヴィック・エドワーズのようなリタイヤ感はありません。
(存命ならワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(※)に出演していた!)
ですが、酸いも甘いも知り尽くした往年の名俳優の独白シーンは、「ヴィックなの?バート・レイノルズなの?」と重なり、胸を熱くするものがありました。
(※2019年9月日本公開、クエンティン・タランティーノ監督 ブラット・ピットとレオナルド・ディカプリオW主演)
大泣き1:愛する女性との再会
老人ホームに入居している最初の妻とヴィックの再会シーン
ヴィックは5回の結婚歴+遊んだ女は数しれず。
(おじいちゃんになった今でさえバイアグラを持っている)
だけど、最初の妻には特別な思いがあったんですね。
アルツハイマーが進行している妻に向かって、切々と話しかけるヴィック。
懺悔だったり、感謝の言葉だったり、愛の囁きだったり。
ここでひと泣きして、そのあとに続く“ある思い出のシーン”で追い泣き。
付き添っていたリルの表情にも注目です。
大泣き2:授賞式でのスピーチ
映画のラスト、授賞式でのスピーチ
最初は、素人たちによる手作り映画祭への招待を「騙された」と憤慨していたヴィック。
リルをドライバーに、腹いせのつもりで始めた思い出ツアーをしたことで、ヴィックの心に大きな変化が起こります。
その思いを観客の前で語るヴィック。
「後悔することばかりだけど、そんな失敗が今の自分を作ったんだ」
憧れの名俳優、人生の大先輩のスピーチに耳を傾ける映画愛溢れる観客たち。
「良かったね、みんなホントに良かったね」と、ことはの涙腺は崩壊しました。
映画前半は、“老いていく切なさ”の方に気持ちがいってしまいました。
たとえチープな映画祭に間違えて出席したとしても、バリバリ活躍している現役中だったら、心広くジョークとして受け入れていたかも。
自分にどこか落ちぶれたという自覚があるからバカにされたと感じてしまったのでは?
「わしゃ、まだまだ若い!」って言っている時点で、もう若くはない。
楽しくポジティブに年齢を重ねることって難しいのかなぁと。
私にはヴィックのような輝かしい過去はありませんが、それでも若い頃はもっと頑張れたのに、と振り返ることもあります。
今の自分は、なりたかった大人になれているのかな、って。
でも映画後半からは、「あぁ、ヴィックは若い頃頑張ったから、こんなに多くの人に愛されてる。積み重ねてきたものの結果なんだな」と。
ヴィックとリル、両方の視線で楽しむことができました。
バート・レイノルズ最後の主演作、観られて本当によかったです。